壁なんてないのでは|世界にひとつのプレイブック|評価|感想

2015年5月6日水曜日

問題は問題を見過ぎることにあると気づかされる映画

暗くなくてコミカルな病み模様

主人公男女はそれぞれパートナーと離れなければならず、それぞれが過去を引きずっている。心を病んで病院やセラピーにかかっている。病んでる状態をじめじめ感がなく、乾いていてコミカルだ。観ていて暗い気持ちにはならない。

何かしら病んでいる

主人公以外にも病院がよいまでとはいかなくても、ストレスや心に問題を抱えている人たちが登場する。みんな何かしら病んでいる。心を病んでいる人との差なんて微々たるもので、何が正常で何が以上なのか、曖昧にしてしまう描き方がこの映画の良さだ。

変えようとして問題をじっと見る

ブラッドリー・クーパー演じるパット主人公は過去の失敗に縛られている。どうにか治して、直して、やり直すために無理に自分を変えようとするがステレスになる。自己暗示をかけて、がんばり続ける。まさに無理矢理自己啓発を続けている。世の中、ポジティブが正しい生き方みたいな風潮があるけれど、それってしんどくない? と主人公を通して思った。

出会った女性は

パットはジェニファー・ローレンス演じるティファニーに出会う。ティファニーがまた病んでいる。傷心から自暴自棄に陥り、さんざんなことをやってきたが、そんな自分を全て受け入れている。飾らなすぎて、変な女に見られているのだけれど、パットに比べるとシンプルで面倒くさくない。

病んでいる二人だからこそ

飾らずに本心をさらけだしていく。ぶつかって傷つけ合ってはいるが、ねっこでお互いを理解している関係が築かれていく。

壁は乗り越えなくていいのでないか?

壁を乗り越えたとき、人は成長する。みたいな言葉、歌詞を何度となく聞いてきたけれど、本当にそうなのかなと、この映画を観て改め直した。壁ばっか見ていたら、乗り越える気力なくならないか? 主人公パットは最初、壁ばかり見ている。壁を乗り越えるために自分を鍛え、変えていこうと躍起になっているが、ことごとくうまくいかない。そんなとき、ティファニーと出会い全くやったことのないダンスに挑戦する。次第に目の前の壁から目が離れていき、別のものが見えだしていく。ティファニーという妻以外の女性・家族・自身に目が向く、そうやっていく内に、本当の問題に気づいて、壁は自分が作った本来存在しなかったものになっていく。そういうふうに、私には思えた。だから、壁は乗り越えなくてもいいのではないか。

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