全てを見せずに不快感を|本格ミステリ映画|誘拐の掟|評価|感想

2015年7月3日金曜日

静かに始まる

冒頭は静かに始まるのだが、一転激しい音と動きで引き込まれる。リーアム・ニーソン演じる主人公の探偵マット・スカダーがいつものバーでいつもの酒にコーヒーを静かに飲む。やさぐれかんとハードボイルドな飲み方がなんともカッコいい。冒頭の1シーンで雰囲気が一気に掴める物語全体のプロローグシーンだ。

印象深い脇役たち

探偵物なので依頼が舞い込む。登場人物たちがなかなかにいい顔の人ばかりだ。特に依頼人の兄弟二人は、なかなかのイケメンで、ただ端正というだけでなく確かな雰囲気、演技で魅力的だった。猟奇犯役も実に良い意味で気持ち悪い。犯罪シーンも全てを写してはいないが、絶妙に不快感を抱かせる。それ以上に、犯人の日常の描写が気持ち悪い。

退屈させない運びの脚本

リーアム・ニーソンは安定の存在感だけれど、この映画では脇役がよかった。展開も決して派手ではないけれど、不思議と退屈させない。クライマックスに向け、ゆっくりと確実に盛り上げていく。監督のことを調べてみると、もともと脚本家として有名だった。私が好きなマイノリティー・リポートの脚本家だ。話の運び方がとてもうまい本だと思う。

謎解きよりも心情に

謎解きが主ではない。スカダーや彼に関わる人間たちの内面が次第に見え、犯人に立ち向かっていく物語。静かに内面に抑え、人間の闇がにじみ出る。闇に侵されながらも、ふと救いを見出そうとする。物のように人間を扱う犯人と、不器用にも繋がり犯人を追い詰めていく主人公たち。正義や倫理を説いてくる映画ではない。爽快感もない。物悲しい映画だ。

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